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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ7

「チーン.............」

 無慈悲にも味方から足蹴にされ、突如として前に出てきた居眠り侍に否が応でも目のいく芥藻屑の面々は、何事が起こっているのか理解できず時が止まったが如く固まる。
 
「なっ!?何をするお銀!?放せっ!儂は奴らの身体で風鳴りを試したいのだ!」

「試し斬りなぞこの先幾らでも機会がございます。それよりも居眠り侍の実力を測りたいのでございます」

 お銀はなかなか後ろへ下がろうとしない仙花の背後に回り込み、羽交い締めにして説得しながらズルズルと後ろへ引きずっていた。

 くノ一のお銀は既に把握していたのである。この面子の中で戦略を立てられる人間が自分だけだということを。
 その思考に辿り着いた要因となる多くの実績と経験を持つ彼女はどうしても雪舟丸の実力を知っておきたかったのである。

「分かった分かった!もう前には行かんから放してくれ!脇が痛くて堪らん!」

「これはご勘弁を。仙花様のお力殊の外強いものですから手前もついぞ力を込めてしまいました」

 と仙花を両腕を緩め解放するお銀。
 彼女の意図を察した蓮左衞門が刀の柄に手を当て二人を守るように後退りする。
 九兵衛はというと、危険を察してとっくに皆の後方へ移動していた。否、逃げていた。

 思い掛けぬ状況を受け固まっていた四谷流甲斐が確かめる。

「おいおい貴様ら。この男は立ったまま寝ているように見えるが消してしまっても構わんのだろうな?」

「もちろん好きにして構わんさ。おやおや、まさかとは思うが、悪名高き芥藻屑ともあろう者達が及び腰になっているんじゃあないだろうねぇ?」

 お銀は妖艶な笑みを浮かべ必要以上に煽って応じた。

「馬鹿を言え。突飛な状況に少しばかり驚いただけのこと。土滑(どかつ)、そいつを粉々に砕いて見せしめにしてやんな」

「合点でさぁ、四谷様。俺に感謝するんだなぁ、一撃であの世に送ってやるぞ!ふんっ!!」

 大柄の「土滑」と呼ばれた男が六尺はあろうかという大金棒を振り上げ、雪舟丸を砕かんとする!

「ブゥン!」

「ドォゴォッ!!」

「なぬっ!?」

 土滑の予想に反し大金棒はヒラリとかわされ空を斬って土の道を強打した。

 雑魚と定義付けしてしまうのは少々心痛いのだけれど、面倒くさいので雑魚とする三人が立て続けに攻める。

「なっ!?なんじゃこいつは!?」

 結果は言わずもがな、雪舟丸は全ての攻撃を寝たまま見事にかわしたのだった。しかし!

「ギイィーーーン!!!」

 突如として鋭い剣線を振るう四谷流甲斐の攻撃を刀で受ける雪舟丸!

「くっくくく、盲目の侍「座頭市」かと思ったが...どうやら人違いだったようだな」

 居眠り侍は眠りから目覚め、四谷流甲斐と睨み合っていた。

 

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