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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 第3話 芥藻屑との戦 ノ28

 喉に触れる短刀の冷たさに恐怖を覚えた沙河定銀がゴクリと喉を鳴らす。

「おめぇ、知らぬうちにわての背後を取るとは...さては忍びの者か?」

 背後を取られた彼には見えていないが、お銀はその美しい顔で不敵な笑みを浮かべていた。

「フフフ。死ぬあんたには猫の手くらい不要な情報だねぇ...でもあんたの人生を終わらせる者の名前を冥土の土産にするといいさ...あたしはね、甲賀の里ではちょいと有名な美濃部(みのべ)家の長女として生まれたんだよ...それはそれは蝶よ花よと大事にみっちり厳しく忍道を歩まされ、二十歳を超えた頃には里のくノ一をまとめる頭領になったてなもんさ...どうだい、家柄も良く、こんな立派で美人のくノ一の頭領に殺されるんだ。ちょっぴり幸せな気分になれたってもんだろう?」

「なるかーーーっ!わては未だ死ねんのじゃっ!これからも長く生きてたくさんの弱者をいじめて楽しむっ!!??ブフッ!!?」

 お銀から望まぬ長話を聞かされた上、己の望みを言い終わらぬうちに喉元を短刀によって深々と斬られた沙河定銀。

「ブォフッ...え、えげつないことを...」

「うるさい豚だねぇ。忍者ってのは「なんも屋」的なところがあるけれど、元来は鍛え抜かれた身体を使って偵察や暗殺を主に仕事としてるんだよ。もう、目障りだから落ちな」

 そう言ってお銀は喉を押さえて苦しむ沙河定銀の背中を「トン」と軽く蹴り、社の屋根の上から容赦なく落とした。

「ヘブッ!?」

 グシャッ!と音を立て、頭から地面に叩きつけられた沙河定銀はそのまま立ち上がることなく、うつ伏せで身体をピクピクとさせていたが、先に逝った雅楽奈亜門と同じく二度と動かぬ屍となった。

 その様子をじっと眺めていた村人達は、失っていた元気を僅かに取り戻し、少し変な表現かもしれないが微かな歓声を上げたのだっだ。

 旅の初日にして芥藻屑という悪党集団の名を知り、その集団の実力者たる芥五人衆のうち、烈剣の四谷流甲斐、速剣の雅楽奈亜門、飛剣の沙河定銀の三人を亡き者とした仙花の一行。
 この所業は一般的な意味では計り知れない功労と云えたが、当の本人達にしてみれば、とんと大したことではなかったようで、まるで何事もなかったかのような顔をして村人達に振る舞っていた。

 村人達と共に仙花とお銀の二人が加わり、焚き火の修繕に取り掛かっているところへ、蓮左衞門と九兵衛の二人が雅楽奈亜門と沙河定銀の乗ってきた馬を連れて現れる。

「仙花様~!言われた通り馬を捕まえて来たでござる!それでこの馬をどうするおつもりにござるか?」

 

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