orutana2020のブログ

文章を書く上で疑問に思った事や、調べた事を適当に掲載します

刀姫in 世直し道中ひざくりげ 仙女覚醒編 ノ24 出雲国(いずものくに)

 はてはて、語り手の暴走は誠に勝手ながらではあるけれどさておき。

 仙花達は、かつてお雛と夫と娘の三人が幸せに暮らしていた家で一晩ぐっすりと眠り、お天道様も晴れやかな新しい朝を迎えていた。

 昨晩宣言した仙花の言った通り、あの居眠り侍の雪舟丸を含めた五人は誠心誠意心を込め、お雛とその夫と娘を埋めた場所に墓標を立てたものである。

 木を削り、丁寧に作りあげられた墓標には、才色兼備にして忍術の天才であり、もはや万能ではあるまいかと思わせるほど多才な書道の達人でもあるくノ一お銀が、それはもう目を見張らんばかりの達筆な文字を刻み仕立て上げた。
 仙花の希望により、普通は祝福の場で登場するであろう「お幸せに」という言葉を添えて...

 荒削りではあったけれど、それなりに墓らしい墓となったものを前にして、仙花か一味全員が手を合わせてお雛とその夫と娘を弔った。

「これでぇ、よし!天気も抜群に良いいゆえ歩も存分に進められよう。今日中に出雲の国へ入り、仙人について可能な限り調べようぞ」

 仙花がそう言ったのを皮切りに、一行は出雲国へ足並みを揃え、軽快に歩みを進めたのだった。

 
 ちょうど空腹で昼飯を食べたくなった頃、仙花の一行は伯耆国(ほうきのくに)出て出雲の地へと足を踏み入れていた。

 歩む道は波音の聴こえた海岸沿いの道からは逸れ、森林浴を楽しめる林や森を通る道へと様変わりしている。

 小鳥の囀る静かな林を抜け、なかなかにきつい勾配の坂を歩いていると、そよ風に乗って何やら美味そげな香りが漂って来た。

 最初にこの香りに気付いたのは鼻のきく仙花である。

「うぅぅ...な、なんとも食欲を唆る香りじゃ。空腹の時にこれは堪らんわい...」
 
 などと言いながら、彼女は口から漏れたよだれを腕で拭いた。そこに乙女の恥じらいなど微塵も感じられない...

「きっとこの坂を上りきった峠に団子屋があるでござるよ」

「団子でやんすか〜。久々でやんすね〜」

「すぴぃ〜、すぴぃ〜」

「仙花様、折角の機会にございます。是非とも昼食に団子をいただくといたしましょう」

「うむ、初めから儂もそのつもりじゃよ。皆の者!団子屋まで競争じゃ〜!」

 相変わらず歩きながら眠る雪舟丸以外の四人の総意により、峠にあるであろう団子屋を目指して急勾配の坂をものともせず一斉に駆け出した。

「仙花様!恐れながらお先に失礼致します!」

 先頭を走っていた仙花を横目にくノ一のお銀が颯爽と抜き去る。

「ぬっ!?お銀め〜、負けてなるものかぁぁぁ!」

 勝負根性に火の付いた仙花の走る速度が一気に加速する!

 

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