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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第56話 覚悟

 だが雪舟丸は座頭市に集中してお銀の癇癪など気にも止めない。

 座頭市が身構えた雪舟丸に対し真剣な表情をして言う。

「武士?否、『剣士』殿。そのような凄みのある剣気を向けられては、此方としても剣を抜かざるを得ないのだが...あっしとの果し合いでもご所望ですかい?」

 訊かれた雪舟丸が瞬き一つせず答える。

「ちょいと昔、風の噂で聞いたことがある。かつて最強の剣士であった『宮本武蔵』が、途方もなく長いあいだ闘い、結局のところ決着を付けられずに終わった相手がいたと...そいつは居合の達人でしかも盲目の男だったとも聞いている。話を聞いてからはずっとその男に会いたいと願っていたものだ。貴殿の発する剣気と様相からして、話に出てきた男に違いないと踏んでいるのだが、如何か?」

「...なるほどねぇ...察するにぃ、剣士殿は己の腕試しの為にぃ、あっしと剣の手合わせを所望しているということでございましょうなぁ...だがあっしはこの通り盲目でして、手加減など出来ず剣士殿を斬ってあの世へ送ってしまうやもしれやせんがぁ、その覚悟はありやすかい?」

 言葉を受けた雪舟丸がため息を一つつく。

「フッ...俺はいついかなる時でも死ぬ覚悟を持ってことに当たっている。そのような問い掛けは愚問以外の何ものでもない」

 

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