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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第65話 高揚

 初めの長く続いた膠着状態は互いの実力が知れず、斬り出せないでいた二人であったが一度剣を交えてしまえば、極めて達人たる二人はある程度相手の実力をはかり知り得たものである。

 杖(鞘)による一撃をまともに受けた雪舟丸であったが、喰らう直前、身体を微妙にずらし急所に受けることから逃れていた。

 とはいえ、座頭市の一撃は速くて重い。ゆえに乱れた呼吸を整える必要があり、雪舟丸が「ふぅ〜」っと息を吐いて呼吸を整える。

 そして、深呼吸を三度繰り返したのち、何を思ったか刀を鞘に収めた。

 刀を納める際に起きた「チン」という音に、盲目だが人一倍聴力のある座頭市が当然にして気付く。

「こりゃぁ面白い剣士殿だ。あっしとの勝負をどうしても居合い抜き勝負としたいらしい...」

「嗚呼、これは俺の信念みたいなものでね。どんな剣技でも人の上をいかねば気が済まないんだ」

 雪舟丸の傲慢とも言える言葉に、座頭市がニヤリと笑い応じて刀を鞘に戻す。

「くくく、やっぱりあっしの読み通り大した剣士殿だ。ならば今一度、居合勝負といきましょうや」

「いざ尋常に」

 言葉を交わした二人が互いに初めと同じく居合の構えを取る。

 不思議なもので、命をかけた真剣勝負だというのに、雪舟丸と座頭市は互いが高揚感で満たされていた。

 

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