刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第66話 鳩尾

　現代風に言うなれば、体内にアドレナリンが分泌し、興奮状態の格闘家の恐怖心や痛覚が麻痺したような状態、敢えて登山家の言葉に置き換えれば「クライマーズ・ハイ」の如き状態だろうか...

　否、人として、剣士として究極の強さを身につけた彼らにはそんなことは当てはまらないのかも知れない。

　ともあれ、二度目の居合勝負に時間ときっかけは必要なかった。

　先に動いたのは「神速剣の居眠り侍」こと雪舟丸。

　音速を超える剣線が座頭市の腹部を掻き斬らんと襲い掛かる！
　常人に見定めることは困難であったが、最初に繰り出した居合の剣速を超えていた！

「ぬっ！？」

「キィーーン！！」

　今度は防御に徹した、否、防御に徹さずをえなかった座頭市が刀の切っ先を地へ垂直に向けて防いだ！

　そして間髪入れずにまたもや杖（鞘）による突きを繰り出す座頭市。

「ビシュッ！！」

　しかし二度目の突きを予測していた雪舟丸は身体を捻り紙一重でかわした！

　雪舟丸が身体を捻った動作を止めることなく一回転させ座頭市の首を狙う。

「ギィン！！！」

　盲目の座頭市がそれにも見事対応し防御に成功したかに見えたその時！

「ズドン！！」

「ごわっ！！？？」

　座頭市が呻き声を上げてよろめきながら後退する。

　雪舟丸が腰に着けていた鞘を抜き放ち、お返しとばかりに座頭市の鳩尾へ突きを入れたのであった。

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