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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第78話 唐突

 光圀と柚須灘(登代)は縁側の廊下に並んで座り、互いのおちょこへ酒を注いで夜空を見上げた。

 辺りはすっかり夜の暗さを呈していたが、満月に近い月の放つ明かりのお陰で雲の形がハッキリと分かるほどには明るかった。

 季節柄、鈴虫などの虫の鳴き声は一切無く、辺りは「しん」と鎮まりかえっている。

 光圀は酒を一口呑むと、柚須灘(登代)の目をジッと見つめて口を開く。

「登代さんや、あんたとは一期一会かも知れんからこの際遠慮無く言わせてもらうがぁ、あんた、この世界の者ではないんじゃろ?」

 唐突に核心を突いた質問をされ、柚須灘は動揺するかと思われたが、そこは仙人界でも類を見ないほど優れた彼女はそっと目を閉じ冷静に返す。

「フフフ、光圀様ほどのお方となると、空虚な嘘など何の意味も持たないようですね...二人きりでゆるりと話せる機会を待ち侘びておりました...そう、私めはこの世界の住人ではございません」

 柚須灘(登代)の言葉を受けても光圀に驚く様子は一切無い。

 彼女から視線を外し月を眺めながら光圀が言う。

「...やはりな...差し当たっては幽霊か妖の者かとも考えたがぁ...恐らくは仙女といったところであろうなぁ」

「...どうやら、貴方様は素晴らしい観察力の持ち主のようですわねぇ...御名答にございます。私めは仙女。名を緋澱柚須灘(ひおりゆすなだ)と申します。以後、お見知り置きを」

 

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