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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第121話 皆伝

 人は誰しも大なり小なり得手不得手というものが必ずある。

 

 彼女に至っては身体を動かす武芸などが「得手」に当たり、逆に身体をあまり動かさずじっとしていることが「不得手」といえた。

 

 よって、育ての親である徳川光圀の御殿で生活しているあいだに、彼から書物を読むことを幾度となく勧められたものであったが、頑なに拒否し、今まで一度たりとも書物を完読することなど無かったのである。

 

 だから天心に手渡された「仙人道」などという分厚い本は、彼女にしてみれば「言語道断」なことだったのかも知れない。

 

「おいおいおい、おいおいおい。あのなぁ、この書物は人間から覚醒した仙人にしてみれば『免許皆伝』の如き代物なのだぞ。こいつを読まんと初歩的な仙術すら扱えぬままとなってしまうがそれでも良いのか?」

 

「それは困る!」

 

「じゃあウダウダと抜かさずさっさと読め」

 

「それは断る!」

 

 仙花の意志は変わらずはっきりと言い切った。

 

 何百年とこの洞穴に住み、人間から仙人へと覚醒させた者たちは数えるほどしか居なかったけれど、かつて経験したことのない呆れた展開に天心が困った表情をして頭を掻く。

 

「...お主なぁ。世の中というものをちぃっとも理解しておらぬようだが...世の中っていうもんはたった一人の我儘に付き合ってくれるほど甘くはないのだぞ」

 

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