刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第113話 実力
不意に喉を突かれた天心が息を整えて口を開く。
「さぁてねぇ。事実か否かはオレにも分からん。分からんが、オレがお主に施した仙術はお主自身の深層心理に働かき掛け呼び起こすもの...まぁ現実で体感したものが夢となって現れたりもするものだが、真実は己の目と耳を使って確かめた方が良いんじゃないか?」
実は天心の放った仙術「悲壮霧中」は、掛けられた側の夢を除き見ることができるというある意味恐るべき戦術である。この仙術を扱える者は仙人界において天心ただ一人であり、よって、仙花の見た夢は全てまるっと彼の知るところであった。
「ふむ...それもそうじゃのぉ...じゃがこれが真実とするならば、雲峡を許すわけにはいくまいて...」
「ケッケッケッ!童よ、それは大言壮語がすぎるというものだぞ。お主が雲峡のことをどれだけ知っているのかは知らぬが、仙人界最強と云われる雲峡の強さは桁外れだ。お主がどう足掻こうと到底倒せるような相手ではないわ!」
大真面目な顔をした仙花の言葉に、さも愉快そうに意気揚々と言い放つ天心。
だが彼の言うことには一理も二理もあることは間違いなく、それほどに雲峡の実力は計り知れないものがあった。
雲峡もまた人格的に問題のある仙女ではあるけれど、天心や柚須灘に一目置かれるほどの恐るべき実力者なのである。
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