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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第153話 朦朧

 大晦日という一年の締めくくりの日を越え、新年を最高の形で迎えられた清兵一家の四人は、並んだ二つの布団ですやすやと眠っていた。

 

 否、貰った女の人形を抱き抱えたまま眠っている椿だけは、冷や汗をかきつつ苦しそうにしていた。

 

 どうやら彼女は悪夢にうなされているようである。

 

 椿の夢の中では妖艶にして美しいが、どことなく不気味な顔の若い女が彼女の腹部に馬乗りになり、両の細く白い腕が首を締め上げてくる。そして。

 

「...あたしにあんたの身体を譲っておくれぇ、あんたの身体を譲っておくれぇ...」

 

 心底暗く響いたその声と首を絞められる息苦しさで椿は自身の意識により目覚めた。

 

 瞼を開けた瞬間に首を絞められる苦しさから解放されたものの、真っ暗な部屋で人の姿を目視することすら困難な状況のはずなのだが、椿の目には薄っすらと人の姿が映ったものである。

 

 朦朧とする意識の中で、人であり、朧げながら女の姿に見えた椿は母親だと思い込み声を出そうとするが。

 

「...ぉお...........」

 

 思うように声が出ず、朧げに見えるその姿をしっかり認識しようと目を擦った。そして改めて目の前にいる人を確認した瞬間、彼女の心臓の鼓動は急激に早さを増したのだった。

 

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