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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第154話 呼吸

 椿は声を出すことが叶わないと悟ると、清兵とトキに助けを求めるべく必死で首を横に傾けようとするが、ぴくりとも意思通りに動いてくれない。

 

 それもそのはず、原因は現段階では不明であったが彼女の身体はいわゆる「金縛り状態に陥っていたのである。

 

「クックックッ、悪足掻きしても無駄だよ。あんたの身体はもはやあたしの手中にあるようなもんさね。クックックッ...」

 

 化粧が施された女の美しい顔の口元が、人の成せる動きの範疇を超えた動きをして卑猥な形に歪む。

 

 椿は未だかつて見たことのない女の姿と不気味さで恐怖心が増してしまい、とうとう目尻からは涙が滲み溢れ出ていた。

 

 もはや悪夢に現れ、自分の首を絞めてきた人物と同一であることは間違いないないと彼女が考えていると、目の前の女は寝ている椿にゆっくりと近づき腹部へ馬乗りに跨って、悪夢と同じくして彼女の首元に両手を当て絞め出した。

 

「...んんん...........」

 

 何とか手を払いのけようともがいてみるが、やはり身体は硬直したまま動かず呻き声すらまともに出ない。


 椿はあっという間に呼吸困難に陥入り、血色の良かった顔からみるみるうちに血の気が無くなり青ざめていく。

 

 やがて抵抗しようともがいていた意識も失い、彼女の自然に行われる筈の呼吸も途絶えてしまったのだった...

 

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