orutana2020のブログ

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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第157話 愛娘

「おや、まぁ、この女の旦那がやっとお目覚めのようだ。悪く思ってもらって構わないがあんたの妻はあたしが喰っちまったよ」

 

 清兵は決して気弱な臆病者などではなかったけれど、頭を失った哀れなトキの身体と、中身こそ姚紅である愛娘の恐ろしい姿を目の当たりにしてガクガクと足を震わせていた。

 

 単に姚紅の姿が怪異そのものであったならば清兵は躊躇なく動き、トキの仇討ちを果たそうとしたかも知れないが、何せ恐ろしい言葉を吐いているのは愛娘の椿の姿である。

 

 しかも寝起きの回らぬ頭ではろくろく上手い考えが浮かぶ筈もなく、ことのほか混乱する頭を制御することでいっぱいいっぱいだった。

 

「つ、椿。いったいどうしたというんだい?正気を取り戻してくれ...」

 

「クックックッ、勘違いするな男。あんたの可愛い娘はもうこの世には居ないんだよ。あたしは姚紅という位の高い怪異さね。折角だからあんたを喰らって、まだすやすやと眠っている息子も喰らってやるとするかねぇ...」

 

 言い終えるや否や姚紅は瞬く間に動くと、トキにした行為と全く同じくして大きな口を開き、清兵の頭に「ガブリ」と噛みついた。

 

「ぬっ!?ぐぐ...」

 

 清兵はトキと同じく必死になり抵抗したものだったが抵抗虚しく、妻のトキと同じ運命を辿ることになってしまったものである。