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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第41話 薬缶

 囲炉裏の薪木が「パチパチ」と音を立て燃え盛り、天井に備わる火棚から伸びる自在鉤(じざいかぎ)の先に吊るされた鉄やかんを温める。

 また唐突なもの云いをしてしまうけれど、日本語の「やかん」は、漢方薬を煎じるために使用されていた薬鑵(やくくわん)が変化したものとされ、漢字では「薬缶」と表記されるようになったらしい。

「火を点けたのは良いが『やかん』の中に水は入っておるのじゃろうな」

 仙花が肝要な疑問を言葉にしつつ、鉄やかんに手を伸ばし軽く揺する。

「おっ!ちゃんと入っているようじゃ♪」

 やかんの重みと中から水の弾ける音を聴き、彼女はホッとした表情を浮かべ姿勢を元の正座に戻した。

 それから暫くのあいだ、壁にもたれ居眠りを続ける雪舟丸以外の四人は、囲炉裏を囲んで燃える火をただ黙って見つめていた。

 心身ともに疲弊した人間にとって、暗い空間に灯る焚き火には癒しの効果がある。
 寒気を感じるような場面ならばその効果は絶大なものとなろう。

 とまぁそんなことはさておき、仙花を始めとして、お銀、蓮左衛門、九兵衛、居眠りを続ける雪舟丸を含めた五人は疲れ切っていた。

 もちろん九兵衛は他の者達とは別の意味で疲労を感じていたのだが、己の強さに自信を持つ他の四人にとって、此度の亜孔雀との戦いは衝撃的かつ自信を損なうに十分値するものだったからである。

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