刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第71話 存在
座頭市が雪舟丸に軽く会釈をしてその場を立ち去ろうとして振り返る。
「あっ、そうそう。あっしとしたことが剣士殿の名を聞いておりやせんでしたぁ」
「...阿良雪舟丸だ」
「ほうほう、そりゃぁ良い名でごぜぇやすなぁ...因みに忘れてもらっても構わんのですがぁ、あっしは座頭市と申しやす」
「既知だ。俺と違ってあんたの名は世に知れ渡っているからな」
「くっくっ、そうでござんしたかぁ、あっし如きの名が世に知れ渡っているとはぁとんと存ぜませんでぇ...ところでぇ、あっしは目が不自由な代わりに気配を感じることが得意でござんすがぁ、雪舟丸殿には別の異種なる力を感じて仕方が無い...否、此度の勝負とは些か関係なきこと、これはやぶさかもいいとこでござんしたぁ、あっしはこれで失礼致しやす」
座頭市は雪舟丸の身体に潜む怪異の「阿修羅」の存在に気付いていたのである。
此度の勝負で雪舟丸が「阿修羅」の力を借りるようなことはありもしないしないし、雪舟丸本人が借りるつもりは毛頭なかったなのだが、実は座頭市が敗北を認める要因の一つではあったのだ。
雪舟丸が何かを言おうと口を開く前に、座頭市は踵を返し、またヒョコヒョコと妙な歩き方をしてその場を立ち去ったのだった。
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