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刀姫in 世直し道中ひざくりげ 疾風怒濤編 第155話 姚紅

 僅かに身体の温もりは残っているものの、微動だにせず死人と化してしまった椿の胸に手を添える女。

 

 その手を押し付けて言葉を吐く。

 

「さて、極上の身体をいただくとしようかねぇ...」

 

 女の手は椿の身体にズブズブと溶け込むように入って行き、一分とかからずして女の身体の全てが見えなくなった瞬間、息が途絶え死んでしまった筈の椿の目がカッと開き、上半身をスッと起こしし呟く。

 

「思った通りだ。此奴の身体は実に居心地が良い...」

 

 声は不気味な女の声ではなく、椿の可愛らしい声であったが口調が明らかに違った。

 

 つまり女は椿の身体を完全に乗っ取ることに成功したのである。

 

 布団を跳ね除け立ち上がる女に横から声がかけられた。

 

「椿、どうしたの?厠(かわや)にでも行くんかえ?」
 
 声の主は遅まきながら物音に気付き目を覚ました母親のトキであった。

 

 トキの声に反応した椿(女)の首があり得ない角度まで曲がり小さな口が開く。

 

「クックックッ、お前の娘は残念ながらたった今息を引き取ったよ。あたしあんたの娘の椿とやらじゃない。姚紅(ようべに)と呼ばれる怪異さね」

 

 起きたばかりで頭が働かないトキは、姚紅の言っていることがさっぱり理解出来ず、己が夢でも見ているのかと思ったものである。

 

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